ところが、実際にはじまってみると、まず厩舎作業と馬の手入れに戸惑うばかりでした。まるで「入部したばかりの新中学生」のように、先輩の後ろについてはウロウロ。持ち慣れない道具で手がつりそうになりながら「そのワラは乾かすほうに!」「足も使ってどんどんボロミで捨てるのよ!」と言われるまま、夢中で作業をしました。
馬の手入れにいたっては、”注意を払う”ことが”逃げ腰になる”ことにすりかわり、”テキパキやる”ことが”粗雑にすます”ことになったり、”丁寧にやる”ことが”のんびりやる”ことになってしまうというありさま。「乗馬は楽しいけれど、厩舎作業を考えるとちょっと……」と少し落ち込んでしまうこともありました。
しかし、本当のショックはそれからでした。昔の乗馬体験をいいことに「きっと大丈夫だろう」と高をくくっていた私は、2週目に「こんなに揺れる馬の背では、手をはなせられない」と必死にしがみつくしかないのでした。その日は夕飯の箸を持つ手も震え、翌日は内出血の跡もできていました(それぼど渾身の力を込めて握っていたのかしらん……)。また、一度覚えた軽速足のリズムも腕の痛みをかばううちにずれてしまい、すっかりわからなくなってしまいました。結局その週は、ちょっと落ち込んだまま乗馬教室を終え、少しだけ続ける自信をなくしそうでした。
そんなふうにして迎えた3週目は、気分を一新し、先生から丁寧に矯正を受け、なんとか指導内容についていくことができました。そして、本格的に自分で手綱をとり馬を操る楽しさや、馬の背から見る彼方の富士山の美しさ、そして仲間と上達し合う喜びを感じることができました。
気がつけば、厩舎の作業も正しく積極的にできるようになっており、馬の手入れも必要以上に恐がることなくできるようになっていました。まだまだ勉強することや慣れる必要がたくさんありますが、これからも馬と仲間たちと、楽しく真剣に乗馬を続けていきたいと思います。