●サマータイムについて(99.6.1)

 最近、日本でサマータイム制度を導入するか検討しているというニュースを聞いたことがありますか。サマータイムとは、日の出が早い夏の時期に、時計の針を1時間進めて生活する制度で、ヨーロッパやアメリカなど多くの国でおこなっています。

 なぜ、日本でもサマータイムをおこなおうというのでしょうか。これは、エネルギー問題と関係があります。
 一昨年おこなわれた『地球温暖化防止京都会議』で、地球の温暖化防止省エネルギーについて世界各国と話し合いがおこなわれました。そして、日本の省エネ対策として発案されたのが、サマータイム制度なのです。
 地球の温暖化とは、人間が多くのエネルギーを使うために、二酸化炭素などのガスが大量に出て、それが地球全体をつつみ、温室のようになって地球が暖かくなることです。地球の気温があがると、氷河がとけて海面が上昇して小さな島が水没したり、異常気象によって環境に悪い影響がでてしまいます。
 そこで、これ以上エネルギーを使わずに、地球の温暖化をくい止めようというのです。

 では、サマータイムをおこなうと、どうして省エネルギーになるのでしょうか。
時計を1時間進めると、朝が1時間早くなり、夜も1時間早くなります。今まで夕方から寝るまで(例えば日没7時〜就寝10時の3時間)家の照明をつけていたのが、寝る時間が1時間早くなるから(日没7時〜就寝9時の2時間)照明も1時間分少なくてすみます。

 なんだか、ややこしいのでグラフにしてみました。左が現在、右がサマータイムの時間割りです。

 中学生の場合は、学校が今より1時間早く始まるので、1時間早く起きることになります。7時に起きている人は今の時計の6時、6時に起きている人は今の時計の5時に起きます。
 そのかわり、学校が1時間早く終わるので、日没までの時間が1時間増えることになります。例えばその分、部活をたくさんすることもできるし、別の野外活動をすることもできるます。人によっては、塾に行くとかゲームをするなんて人もいるかもしれませんね。大人は、会社が1時間早く終わるので、仕事帰りに習い事をする人や、仲間と遊びに行くなんて人がいるかもしれません。

 もともとヨーロッパでは冬の日照時間が短いぶん、夏の太陽を有効利用するために、サマータイムを使っているのです。長い夕方の間に、日光浴をしたり、レジャーを楽しんだりしているのです。

 省エネルギーになって、遊ぶ時間も増えるなんて、良いことずくめのようですが、問題点も心配されています。
 この制度を日本で新しく導入するためには、国際線飛行機の離発着時刻の調整が必要になります。また、ラッシュが1時間早くなるので電車の運転や信号機の動きを1時間早くすることが必要です。このようなシステムの多くは、コンピューターによって制御されているので、それらを毎年(春に1時間早くするときと、秋に1時間もどすとき)2回ずらさなくてはいけません。これらのことをおこなうには、ぼう大な費用が必要とされます。
 また、漁村や農村など自然条件によって暮らしている人は、生活リズムにあわないという意見もあります。会社につとめている人は、仕事が終わる時間でもまだ明るくて、(帰りにくくて)残業が増えるかもしれないという人もいます。
 そして、誰でも心配なのが寝不足です。例えば君が、夕方の1時間友達と遊んだとします。上の時間割りでいえば、サマータイムの4時に部活が終わり、5時まで友達と遊ぶことが増えます。5時から帰宅・夕食になり、7時からTV・風呂、9時から宿題をやって10時に寝るようになります。でも、次の日の朝は1時間早い6時に起きなくちゃいけないのです。
よく考えると、当然ですよね。1日は24時間で変わりなく、夕方に1時間多く遊んだら1時間睡眠がへるのです。大人も、夕方に1時間習い事をしたり、野外活動をおこなったりすると、やっぱり会社が1時間早く始まるので、1時間早く起きなくてはいけません。

 気候的にも、問題があるといわれています。
 昔からサマータイムを使っているヨーロッパは、夏でも涼しくて(ロンドンの7月・8月平均気温は16℃、パリの同平均気温は18℃)、東京の5月・10月なみのさわやかさです。朝夕の気温も下がり、このような過ごしやすい気候では、サマータイムを使って夕方の時間を楽しむことができます。
 一方、日本の夏は気温や湿度が高く、熱帯のような蒸し暑さです。夕方も暑くて、快適に野外活動をするというわけにはいきません。同じような気候の東南アジアで、サマータイムを導入して定着した国はありません。
 実は日本でも昔、サマータイムを使っていた時代があったのです。
昭和23年から26年の4年間だけおこなわれたのですが、だんだん反対意見が多くなり、結局やめてしまいました。やめた理由は、当時多かった農村の生活にあわないとか、労働時間が増えてつかれて健康によくないとか、生活のリズムを変えたくない、という意見が増えたからです。

 では、一番の目的である、省エネルギーはどうでしょうか。
たしかに、家庭の照明時間がへるので電気の使用量がへります。次にへるのが、ガソリンスタンドなど業務用照明です。しかし、余暇が拡大することにより、増える電気もあります。
 結局のところ、年間50万キロリットル(原油換算)の省エネになり、44万トンの二酸化炭素がへることになりそうです【政府発表】。50万キロリットルの省エネとは、どのくらいのものでしょうか。これは、25万世帯が1年間使えるエネルギー量です。あるいは、日本全世帯の1カ月弱のエネルギー量に相当します。(多いのかな!) 1軒の家では、1年間に660円の節約です。日本の全エネルギーの0.1%程度です。(おや、少ないのかな?)

 もし、省エネルギーだけを考えるなら、家や店で使うエネルギーをもっと少なくすることを考えてはどうでしょうか。ムダな電気を消したり、まぶしい照明をおさえたり、みなおす点はたくさんありそうです。
 いずれにしても、サマータイムは人々の生活に大きな影響をあたえるので、じっくり話し合って決めたいですね。そして何よりも、サマータイムになってもならなくても、みんなで省エネルギーに心がけましょう! 夏の冷房の設定温度を1度上げるだけでも、全員でやれば大きな節約になるのです。

(中学生対象web原稿よりリトル)


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