リトルの取材こぼればなし


私が取材で感じたことや原稿の一部を紹介します。

ご感想はこちら。    リトルのページへ戻る


●中学生対象webに掲載した記事「野生のトキが日本から消えた日」(99.1.21)

 昨年11月、中国の江沢民主席が来日したとき、おみやげとして国際保護鳥のトキ(漢字では「鴇」や「朱鷺」と書く)のつがいを日本にプレゼントすることが決まりました。
 学名で「ニッポニア・ニッポン」という名前がつけられるほど、日本を代表する鳥であったはずの「トキ」は、どうして日本から消えてしまったのでしょう。

 トキは19世紀まで、日本の各地に生息していました。ところが、狩猟による乱獲や、生息地の環境の悪化などにより数が激減してしまい、1920年代にはすでに絶滅したのではないかと考えられていました。その後1929年・1931年に、能登半島と佐渡島で約100羽が確認されましたが、環境の悪化などによりこれらの群の数も減ってしまいました。
 そして18年前の1981年1月22日、佐渡島に残っていた最後の5羽が捕獲され、日本国内での野生のトキはいなくなったのです。

 その後「佐渡トキ保護センター」で人工繁殖を試みましたが、個体数が少なかったため研究は思うようにいきませんでした。現在では「キン」1羽が残されるだけとなり、ついに「日本系統のトキ」は絶滅が確定しました。

 トキは日本のほか、ロシアや中国・朝鮮半島に生息してましたが、日本とおなじような状況で数は減っていき、絶滅したと考えられていました。
 が、くしくも日本で野生のトキが消えた1981年、中国の陝西(せんせい)省、洋県にて野生のトキが再発見され、日本以外にトキが生存していることが判明したのです。その後、中国政府によって厳重に保護された結果、現在では約100羽まで増加しました。まだまだ絶滅のおそれがなくなったわけではわけではありませんが、明るいニュースですね。
 また中国では人工繁殖にも成功しており、今回日本の贈られることになったトキも、この人工繁殖による2羽だそうです。ぜひ日本でも繁殖に成功してもらいたいと思います。

 ところで、このページの背景の色は、何という色かわかりますか?
 この色は「とき色(鴇色)」といい、トキの美しい羽根の色なのです。私や皆さんもそうでしょうが、実際にトキを見たことのある人は少なくて、「とき色」と言われてもピンときませんよね。このままでは日本独特の色の名前さえ消えてしまうかもしれません。
 ぜひ日本と中国の協力で繁殖に成功し、いつかまた「とき色」の美しい夕焼け空をトキが羽ばたく、そんな光景が日本で見られるよう心から願いたいと思います。

(怪鳥)


 取材こぼれ話へ  フリーライターの部屋へ  リトルのページへ戻る