太宰治は、明治42年に青森で生まれ、昭和10年「逆行」という作品で第一回芥川賞候補になり、多くの作品を書きました。彼は生涯に4回の自殺をはかり失敗し、薬物中毒にも悩まされました。自殺の理由はさまざまでしょうが、生きることに意味をみつけられない苦しみは、彼の作品に多くの影響をおよぼしたといわれています。
彼の自伝的作品といわれる『人間失格』では、「恥の多い生涯を送ってきました。自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。」と書いています。また、彼の有名な言葉に「生まれて、すみません。」というのがあり、「撰(え)ばれてあることの恍惚(こうこつ)と不安と二つわれにあり」というヴェルレェーヌの詩をよく口にしました。
このように彼は、屈折した人生の中で、生きることの罪悪感にとらわれた作品を多く残しました。
そして、昭和23年6月13日夜、太宰治は愛人の山崎富栄とともに、東京都三鷹市の玉川上水(たまがわじょうすい)に身を投げて自殺しました。その遺体は1週間後の19日に発見されました。それはちょうど、彼が39歳になるはずの誕生日のことでした。
以来この日を「桜桃忌」として毎年供養が行われ、今年で50年をむかえます。
彼が眠る三鷹の寺には、やはり文豪として有名な森鴎外(もり おうがい)の墓が、太宰の斜め向かいに立っています。
また、入水したと思われる場所には、彼の故郷の青森県金木産の岩と、「玉鹿石(ぎょっかせき)」と書かれたプレートがひっそりと置かれています。
(左写真:石の向こう側、木の茂っているところが玉川上水)
今年も、これらゆかりの場所に、多くのファンが訪れることでしょう。
太宰治の最期の作品は、未完になった『グッド・バイ』です。みなさんも、この機会に彼の作品を読んでみてはいかがですか。
(文・写真 リトル)