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鬼という言葉を辞書で調べると、たくさんの意味があります。
1で紹介した悪神・邪神とは、わざわいを招く神です。
反対に、鬼神になると人間の災難をのぞく神です。神楽に登場する鬼など、祭や神事・民俗芸能に登場するのもこの守り神です。
2は、実在しない巨人をさす場合と、実際に山に隠れて住む人をさす場合があります。
昔の人が巨人の伝説を考え出したのは、きっと普通の人間に不可能な自然現象にあったとき「これは山の大男のしわざにちがいない」と思ったからでしょう。そのため、各地方や山には、多くの巨人伝説が残っています。
また、昔はさまざまな理由で里を追われて山に住む人がいました。例えば、里の仕事がない人が、山で狩りをしたり木を使って道具を作ったりして暮らしていました。
それから、もともとその土地に住んでいた人(先住民)が、後から来た人々に攻められて山へ逃げることがありました。このとき、後から来た人は「最初にいた住民は悪い人間だったので我々が退治した」とよく言います。これが鬼退治の元かもしれません。多くの場合は、中央の権力に従わない地方人民を従わせるために行われていました。しかし先住民から見れば、後から来て自分たちの土地をうばった者こそ、鬼かもしれませんね。
実際の人間を鬼とよぶケースでもう一つ忘れてはいけないのが、異種族をさす場合です。日本は島国のため太古から、海流にのっていろいろな異民族がやってきました。交流を求めて来る場合もあれば、たまたま流れ着いた場合もあります。いずれにしても彼らには、日本人とは明らかにちがう体の特徴があります。背が高かったり目の色がちがったり鼻が高かったり髪がちぢれていたり肌の色がちがったりします。この特徴が、一般的にいうオニ(青オニ・赤オニ)や、鼻の高いテングを作り出したようです。これには、日本人が未知の人種を恐れたことをあわらしているのでしょう。
3の鬼は、漢字のなりたちに関係しています。「鬼」という字は、人間がひざを曲げてほうむられる姿(屈膝葬=くっしつそう)に由来しています。
子孫を見守る先祖の霊の場合もあれば、うらみを残して死んだ人の怨霊の場合もあります。
4は、いわゆる妖怪です。カッパやひとつ目小僧、かまいたち、化け狐なども鬼のひとつです。
5の鬼は、よく絵本に出てくるような、牛のツノと虎のキバと虎のパンツをはいた怪物です。
もうひとつは、仏教の世界でいう、人間が生まれ変わるための“世界”の使者です。地獄・餓鬼・畜生・修羅という、「迷界の六道」にいる守護神です。奈良や京都を旅行すると、これらの像がお寺に安置されているので、機会があったらぜひ見てみましょう。
6は、オニヤンマやオニアザミなど、形が標準より大きかったり変わっているものにつけられています。そしておもしろいことに、小さなミノムシの異名が「鬼の子」であったり、美しいシオンの花の異名が「鬼の醜草(おにのしこめぐさ)」であったりします。
さて、ここで豆まきの鬼について考えてみましょう。これは「1」の悪神のようです。
豆まきは、奈良時代から行われた宮中の年中行事のひとつで、大晦日の夜に悪鬼をはらい疫病をのぞく儀式でした。これが近世になり、節分の行事として民間に広まりました。鬼をはらうことから「追儺(ついな・なやらい)」「鬼遣らい(おにやらい)」ともいわれます。
鬼が出ていったら、玄関や門口に、においの強いニンニクやショウブ、ヨモギの葉、ヒイラギの枝にいわしの頭をさしたものを下げておくと鬼が戻ってこないといいます。また、目のたくさんあるものを嫌うので、かごやざるを出しておくのもよいそうです。
こうして節分がすむと、日本に春がおとずれます。
(リトル)