●夏の風物詩「赤いほおずき」(01.7.9)

 7月9日・10日は、浅草の浅草寺でほおずき市が開かれています。また、この日は同時に観音様の縁日四万六千日にあたり、大勢に人が参拝にやってきます。

 四万六千日というのは、「この日にお参りすると4万6000日かよったのと同じご利益がある」という日のことで、いわば神社のサービスデイみたいなものですね(一部の神社は他の日)。4万6000日といえば、なんと126年分です。たった一日で一生ぶんのご利益があるんだから、昔の人だって行きたくなりますよね。だから、この日は神社の前に縁日がでて店が並ぶようになりました。そんななかで、ほおずきの市も立つようになりました。
 一説にはこの日、源頼朝が東北地方の戦争帰りに熱射病で弱った兵士にほうずきを食べさせた、という故事にちなむともいわれています。昔は、ほおずきに利尿作用、解熱作用、鎮静作用があるとして、薬用植物になっていました。ほかにも、ほおずきを元旦に食べると病気にならないとか、根をせんじて飲むと女性の腹痛や子どもの夜泣きを防ぐといわれていました。すべてが事実ではありませんが、昔はそのように信じられていたようです。
 一般的には7月の旧暦名・文月がなまって、フミツキ市がホオズキ市になったといわれています。

 また、ほおずきは子どもの遊び道具としても親しまれてきました。ほおずきの実の外側の皮(ガクの変化したもの)をやぶると、中からサクランボくらいの丸くて赤い果実がでてきます。この果実を指でもみほぐし、へたの部分からそっと中の種を出すと空っぽになって、小さな風船ができます。これを口にふくみ、つぶすようにするとキュッキュッと音がでます。みなさんは、こうやって遊んだことがありますか。上手に種が出なくてやぶれてしまったり、友だちと鳴らしあいっこをしたり、みんなでやるとなかなか楽しいですよ。

 『枕草子』(まくらのそうし)にも、「大きにてよきもの、火桶(ひおけ)。酸漿(ほおずき)。山吹の花(やまぶきのはな)」とあり、平安時代からあったようです。
 いま、ほおずきのことを「酸漿」と書きましたが、ほかに鬼灯とも書きます。「灯」(ともしび)という字は、ほおずきの実の赤い色や丸い形をよく表していますよね。では、「鬼」という字はどこからきたのでしょうか。はっきりしたことはわかりませんが、ほおずきの鉢をお盆のころ仏壇に飾ったり、精霊むかえにほおずき提灯(ちょうちん)を使ったりしたことから、この植物になにか恐ろしいイメージを持ったのかもしれません。地方によっては、ほおずきを庭に植えると病人や死人が出るとして、忌み嫌うところもあります。

 このように、ほおずきは薬になったり、おもちゃになったり、おそれたりしながらも、この季節の風物詩として親しまれてきました。
 風物詩といえば、浅草寺の「四万六千日の縁日」では、雷よけのお守りも売られてきました。梅雨が明けて夏になると、夕立が降るようになります。夕立は田畑に水分をあたえ、稲や作物を育てる大切なものですが、一方で落雷はこわいものとしておそれられたのです。そこで、雷がこわがる赤い色をしたお守りが売られました。同じ理由で、赤いほおずきも売られたのかもしれませんね。ちなみに、ガラス風鈴が赤いのも同じ意味です。軒下に赤い風鈴をつるし、その音色で涼しさを楽しむとともに、落雷がないように飾られました。ひと夏つるされた風鈴は雨風にあたり、やがてひもが弱って庭に落ちてわれます。風鈴の赤い色に雷などその夏の厄をつけて、それがわれることで厄落としをしました。こうして、また次の年に赤い風鈴を買ってきて軒に下げるのです。
 もうすぐ梅雨明け。赤いほおずきを飾ったり風鈴をつるして、夏の風情を楽しみましょう。

(中学生対象web原稿よりリトル)


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