●重陽の節句と菊の花(98.9.9)

 9月9日は重陽の節句です。昔から中国では、奇数を縁起のよい“”の数とし、一番大きな陽の数である「9」が重なる9月9日を「重陽」として節句のひとつにしました。ちなみに、偶数は“陰”の数です。
 中国ではこの日、邪気を払う実をとりに丘や山に登る「登高(とこう)」という行事や、菊の酒を飲んだ少年が800歳以上も生き続けたという伝説から、不老長寿の薬として菊酒を飲む風習がありました。これが日本に伝わり平安時代には宮中行事になり、菊酒を飲むだけでなく、前夜に菊の花に絹をかぶせその香と露をうつし取った絹綿で体をなでるといつまでも若く美しくいられる「菊の被綿(きくのきせわた)」が行われました。その様子は、『枕草子』や『紫式部日記』にも登場します。
 このように重陽の節句には菊の花がよく使われ、別名“菊の節句”とも呼ばれます。

 菊の花は皇室の紋章であり、日本を代表する花の一つですが、もとから日本にあったわけではありません。奈良時代に、薬用として中国からやってきたのです。室町時代には、食用としてもさかんに栽培されました。菊の家紋は平安時代から宮中で使われはじめ、特に後鳥羽上皇(ごとばじょうこう)が好んで使ったといいます。その後、江戸時代までは一般庶民でも菊紋を使っていましたが、明治2年に禁止され皇室だけの紋章に決まりました。

 ちなみに節句とは季節の節目の日のことです。気候の変わり目の「節日(せちび・せつび)」にお供え物をした「節供(せちく)」が、節日そのものをさすようになり、「節句」という言葉になりました。1年をとおして五節句があり、1月7日に七草がゆで新年を祝う「人日(じんじつ)の節句」、3日3日ひなまつりの「上巳(じょうみ・じょうし)の節句」、5月5日の「端午の節句」、7月7日の「七夕の節句」、そして9月9日の「重陽の節句」です。
 時機おくれで役にたたないことを「六日のあやめ 十日の菊」といます。あやめは5月5日に、菊は9日9日に使うので、いずれも翌日では役にたたないのです。

(中学生対象web原稿よりリトル)



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