●酉の市のおはなし(98.11.22)

 毎年11月の酉の日になると、神社の境内に熊手を売る店が並び、商売繁盛を願う三本じめの手拍子が響きます。今年の酉の日は11月10日と22日です。

 酉の市は、東京・浅草の鷲神社が有名で、毎年大勢の人が訪れて大変にぎやかになります。この神社は「おとりさま」という愛称でも呼ばれ、天日鷲命(あめのひわしのみこと)と日本武尊(やまとたけるのみこと)がまつられています。
 天日鷲命は、弦という楽器を奏でる神様です。神話では、あるとき世の中を照らす天照大神が岩の戸に隠れてしまい、誘い出すためにほかの神様といっしょに弦を演奏しました。そのとき弦の先にワシが止まったことから、世の中を明るく照らすための縁起のよい鳥とされ、彼も開運の神様としてここにまつられるようになりました。
 また、日本武尊は古代伝説に登場する人物で、天皇の命令により日本各地をおさめるためにあちこちで戦を行いました。東国をおさめたときに、神社に熊手をかけてお礼参りをしました。その日が酉の日だったことから、鷲神社の祭日になったといいます。

 正しくは「酉の祭(とりのまち)」と呼ばれるこの祭りは、しだいにまわりに市がたつようになり、「酉の市(とりのいち)」として親しまれるようになりました。
 このにぎわいは江戸時代中期から始まり、多くの浮世絵にも残されています。

 神社ではこの日、開運・商売繁盛に「かっこめ」「はっこめ」といわれる熊手のお守りを配ります。
 熊手は“運をかきこむ”“運をとりこむ”縁起ものとして、神社のまわりでも売られるようになりました。一般に、小さな熊手から買うようにして、次の年からだんだん大きな熊手を買うのがよいとされます。また、買うときに値段を安くしてもらうようにかけあい、値切った分はご祝儀として店にあげるのが礼儀とされます。このやりとりも、とても楽しいですね。
 また、この市で売られるサトイモ(「八つ頭」あるいは「唐の芋」とも呼ばれる)は、“子を増やし”“頭になる”としてやはり縁起ものとされます。

 最初の酉の日のことを「初酉」あるいは「一の酉」といい、二番目を「二の酉」と呼びます。年によっては「三の酉」まであります。
 三の酉まである年は火事が多いといわれますが、これは「夜中に鳴かないニワトリが鳴くと火事がでる」という地方の迷信に由来があるようです。ただ三の酉のころは、11月も終わりで寒さも増し、火を使うことが増えるから「火の用心」のいましめからいわれたのでしょう。

 昔から「酉の市」になると、みんな冬の訪れを感じ、冬支度を急ぎます。
あなたの冬支度は、もうすみましたか。

(中学生対象web原稿よりリトル)


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