●府中のムサシノキスゲのおはなし(96.6.2)

 リトルと怪鳥さんの住む東京都府中市には「浅間山(センゲンヤマ)」という山があります。信州生まれの私に言わせると、あれは”丘”だって思うんですけど、(やっぱり山とは2000メートル前後じゃなくちゃぁ。ってアルプスに囲まれてる者のセリフだわ、失礼)そこにはニッコウキスゲによく似た「ムサシノキスゲ」という花が咲きます。
 ニッコウキスゲの変種で低所の乾地におりた型だそうですが、自生地はここだけです。正式には、ユリ科ワスレグサ属に分類される多年草で、花型はノカンゾウ型です。

 ニッコウキスゲと言うと諏訪地方の車山高原が有名ですが、あちらは6月下旬ころ咲き、山肌一面に咲き広がって見渡すかぎり黄色のじゅうたんになります。いつも諏訪のニュースで「車山高原でニッコウキスゲが咲き始めた」と聞くと、あぁ諏訪にも夏が来たな!と思ったものです。

 怪鳥さんとの思い出の歌のなかに、「ニッコウキスゲ」というタイトルの歌があり、諏訪を舞台にストーリーがつづられています。昔、怪鳥さんに諏訪の話をするとき、山と湖とそばと霧ヶ峰と花火と御柱祭(おんばしら)が出てくるこの歌は、イメージを伝えやすくてたびたび話したり歌ったりしました。

 以来、「府中にもムサシノキスゲがあるから一緒にみよう」と言っていたのですが、いつも遅すぎて3年目にしてやっと満開の花を見ることができました。ちなみに、見頃はゴールデンウィーク過ぎから5月中旬くらいですが、今年は春先に寒かったせいかとても遅れて5月下旬にやっと満開になりました。

 この浅間山には他にも珍しい野草があるらしく、出会った方から「キンラン」「ギンラン」という可憐な花を教わりました。最近はグリーン・ブームのせいか、貴重な野草を根こそぎ持っていってしまう人がいるそうです。山で咲いてこそ美しい野草のに残念ですね。いつまでも、この山の自然を大切にしたいですね。



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