●やく払いをする羽子板(98.12.17)

 17日から19日までの3日間、浅草寺で年末の風物詩羽子板市が開かれます。境内に大小色とりどりの羽子板が飾られると、縁起物として買い求める商売人や、女の子への贈り物として家族で見に来る人たちでにぎわいます。

 羽子板の“羽子”とは、トンボのことです。昔からトンボは、大切な稲を枯らしたり伝染病の原因となるハエやカを食べてくれるものとして、大切にされていました。そんなトンボをまねた羽根をつくことで、ハエやカをはらう意味があったようです。

 正月を飾る羽根つきは、邪気を「はね」のけるものとして、室町時代から行われていました。
 特に将軍家に献上されるものには、左義長(さぎちょう)節句という宮中行事が描かれていたといいます。左義長とは、中国の爆竹行事にならった一種のやく払いで、現在のドント焼き(地方によって呼び方は変わる)のことです。青竹に扇子や短冊などをつるして焼き、これが民間に伝わって門松やしめ縄を焼く行事になりました。当時の“左義長羽子板”には、太鼓ではやしたてるなかを公家たちが左義長の行事を見物している様子が、金箔や極彩色で描かれていたといいます。
 江戸時代になると、板に墨で絵を描くだけだった庶民の羽子板が、色紙をはったり布をはったり、さらに綿をふくませるようになってきました。
 これが、現在主流になっている“押絵羽子板”のはじまりです。

 押絵羽子板の産地には、埼玉県春日部市が有名です。第二次大戦中に浅草の押絵師たちが戦火を逃れ、春日部に移り住んだことに由来しています。ここには、羽子板で使う良質の桐があったからです。

(中学生対象web原稿よりリトル)


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