朝7時すぎ、子どもたちが起きてきたので、私は2階に上がって布団に入る。父のそばを離れているときの方が哀しい。昨日からのいろいろなことが頭をめぐり、結局寝つけず。
 8時半、軽く朝食をとる。
 9時、今日の予定をみんなで打ち合わせる。妹は市役所に死亡届の提出、埋葬許可の受諾などに出かける。姉や義兄たちは、今日の通夜のために1階全体の掃除を開始。私は父の酸素機器を業者に返品連絡。
 9時半、みんなそれぞれ大掃除。棺が通る玄関や家の入り口も片づける。通夜用の長座卓を公民館に借りに行く。姉夫婦は納骨にそなえて、お墓のお掃除。私は葬儀業者と昨日からの打ち合わせの続き。遺影用写真を渡し、今後の詳細について長い打ち合わせが昼まで続く。
怪鳥さんは仕事の打ち合わせを1件してから、私の荷物をまとめて電車で諏訪へ。
 1時、アルコール類などを友人の酒屋に手配。ほか、さまざまな手配で忙しい私に替わり、姉が怪鳥さんを迎えに上諏訪駅へ。私はおそい昼食。
 2時半、病院へ忘れ物の千羽鶴を取りに行く。昨日までの2カ月強、何度も通った場所。エレベーターの扉が開いて、見慣れた風景が広がると、そこに父がいないことが信じられない。涙があふれる。いつものヘルバーさんがいたので昨日までのお礼を言う。ナースステーションへ行くと、千羽鶴は丁寧なメモとともに保管されていた。受け取った後、メモを書いてくれた看護婦さん(昨日、最期のお世話をしてくれた人)あてにお礼の手紙を残す。ゆっくりと病院を去る。 服が足りなくなるので買い物をする。
 4時、家に帰ると、もう母の姉妹など親戚が来ている。身支度を整える。来客が増えておつまみがたりなくなったので妹と買い物に行く。怪鳥さんが父の棺の収めるお酒を買う。
 5時すぎ、お坊さんが到着。みんながそろったところでお通夜のお経。
 6時、お坊さんと親戚一同で食事。
 7時、近所の方や知人がお通夜に来てくれる。そのまま隣組の人は、食事をしながら明日の葬儀の打ち合わせ。このへんは、お寺で葬儀をする場合、隣組の人たちが裏方や進行をしてくれます。
 8時、義妹夫婦が到着。お焼香をし、いっしょに食事。
 8時半、納棺。みんなで少しずつ分担して、父に白い死装束をつける。白い三角の頭布をつけると、もうすっかり生きているときとはちがう姿になってしまった。みんなで父の布団に手をかけてそっと棺に移すとき、突然ロッキーがキューキューと鳴き出した。彼にも父とのお別れの時がわかるのかな。それを合図にしたように、姪たちも泣き出した。私もさそわれるように、涙がこぼれる。父の顔の周りをたくさんの花で飾り、周りに大好きなお酒やロッキーとベル(むかし父が可愛がっていた犬)の写真を入れてあげる。入院中ずっと父のそばに飾ってあった千羽鶴(姪の幼稚園で折ってくれたもの)を入れ、姪たちの手紙もいっしょに納める。いちばん泣いていためぐちゃんは、さらに最後のお別れの手紙を書いて入れた。
 9時半、お通夜に集まった人々が帰る。こうして、やっと家族が一息ついて、父との最後のお別れを惜しむことができた。なんだか一日中忙しくて、父とお別れをかみしめるひまもなく、一部の親戚に気を遣ったりしてくたくたになった。明日も早朝から忙しくなるけれど、せめて今夜は父の棺のそばにいたくて、横にふとんをひいて寝る。怪鳥さんとしゃべっているうちに、すぐ寝てしまった。