9時、私は病院へ移動するための準備を整え、妹は父に声をかけてからバイトに出かける。送迎車が来るまで父の好きな犬(ロッキー)を枕元に招き、父の手にエサを持たせるとうれしそうに与えた。
 10時、在宅担当看護婦が血圧・酸素量などを計測し特に問題ないのでいっしょに病院へ移動。主治医や看護婦から「連休は家で楽しかったですか?」と声をかけられると「うん、うん」とうなずく。母は月に1度の持病治療で内科へ。怪鳥さんと二人で父の様子を見守りながら荷物の整理など。
 10時半、病棟看護婦が血圧を測るが低くてうまく計れず。体温が低く手足が冷たいので温湿布や湯たんぽであたためる。ネグライザーで喉を加湿するといつものように手で払いのける。痰を吸入器で吸い出す。血圧計を交換するがまだ計れず。再びネグライザーをあてるが、今度は嫌がらずにゆっくりと息をする。父に声をかけながら看ていたが、しだいに返事が弱くなり宙を見て反応がうすくなる。息が弱すぎると感じたので、たまたま席を外していた看護婦を呼ぶ。
 11時半、あきらかに脈が弱いので個室へ移動。主治医が駆けつけ心臓マッサージ開始。内科へ母を呼びに行き、妹のバイト先へ電話して連絡。個室にて心臓マッサージの続く中、父に何度も母と声をかけるが反応なし。妹が到着するが息は続かず、心臓は自活せず。
 12時9分、医師が臨終を告げる。
 「お父さん今までありがとう。よくがんばったね。おかげでこの2カ月間、いっぱい看病してあげられたし、自宅で家族みんな一緒に過ごせてうれしかったよ」…。

 12時半、主治医から今までの経過を振り返りながら最期の報告を受け、先生にお礼を言う。
 13時、看護婦が体を拭き最期の処置をする。私もいっしょに父の最期のお世話をする。先ほどまでいた大部屋の荷物をまとめる。
 14時半、父を乗せた車が病院を出る。私と怪鳥さんはひと足先に家へ戻り、父を安置する部屋や家の中を片づける。
 15時、小雨降るなか父の遺体が自宅に運ばれる。業者の人が挨拶をし、祭壇の準備などを始める。妹と母は菩提寺へ行き、葬儀などの手順を教わり打ち合わせを行う。私は業者に教わりながらお供えのご飯を炊き、お団子を作り、花を飾る。
 17時、怪鳥さんは祭壇製作の手伝いや灯籠の掃除などを行う。母と妹が戻らないので、祭壇ができあがったところで業者が帰る。ふと怪鳥さんと二人きりになると父のことを思いだして涙があふれる…。

 18時、妹たちが戻り葬儀日程が決まる。親戚などに日程などを連絡。
 19時、業者が再び来て、今後の打ち合わせが行われる。怪鳥さんは荷物をとりに最終電車でいったん府中へ戻る。
 20時、住職が来てお経をよんでくれる。ほどなく2番目の姉一家が到着。みんなに父の最期の様子を報告。姪たちと父(おじいちゃん)のこと話す。連休に部活の都合で来られなかった奈緒子ちゃんが特に泣いていた。
 21時、朝から何も食べていない私たちのために義兄が夕飯を買いに行き、父には大好きなお酒を供える。本日初のまともな食事をしながら、妹と明日の予定を打ち合わせる。
 22時半、府中に着いた怪鳥さんに電話をしながら、私の荷物をまとめてもらう。
 23時、1番目の姉一家が到着。姉たちにも父の最期の様子を報告。
 24時、子どもたちは二階で就寝。未明まで、父の顔を見ながら姉とたくさんの話をする。
 朝4時、さすがに疲れ果てたので父の横で毛布にくるまって休む。父の顔はまるで寝ているようで、声をかけたら今朝までと同じように目を開けてくれそうな気がする…。