今月の“雪”辱戦

吹雪のフィンランドから
カナダの新天地まで
オーロラを追い求めた冬

文・原智子(リトル)/写真・佐藤幹哉(怪鳥)


※本文書は「SKY WATCHER」2000年6月号に掲載されたものを、アストロアーツ様のご好意で掲載させて頂くものです。ありがとうございました。


「皆既日蝕きれいだったね。今度はオーロラが見たい!」。95年秋、タイからの帰国飛行機の中で言った私の言葉に、夫は「2000年まで待ちなさい。どうせ見るなら太陽活動が活発な時期にしよう」と答えたのだった。

 あれから5年。私は待ったぞ!今年は、絶対オーロラを見るぞ!!まるでオーロラにとりつかれたように、観測旅行を計画し始めた。

 2000年2月27日、私たちはフィンエアーに中にいた。たくさんあるオーロラアツーの中からフィンランドを選んだのは、昔からラップランドに憧れていたから。しかし、私たちを待っていたのはかわいいトナカイだけではなかった。降りしきる雪、雪、雪・・・。当然夜空は晴れず観測できたのは雲の動きと積雪量のみ。サーメ文化とのふれあいは満足したけど。

サーリセルカのオーロラ観測小屋の中で、雪に降り込められてグロッキー気味の筆者。八角形の小屋の真ん中に薪ストーブがあり、その周りをトナカイの革をひいたベンチが囲んでいる。雪のせいか気温が下がらず、暖かい室内だった。一晩でも多く見たいと5夜連泊したが1夜も晴れなかった。昼はパウダースノーでのスキーやクロスカントリー、トナカイぞり、犬ぞり、スノーモービル、サーメ人宅訪問などいろいろ楽しめる。

降りしきる雪で、かまくらホテル「イグルー」も埋まりそうなほど。フィンランドの天候は、いったん崩れると1週間から10日間は晴れない。

 それから1カ月後の3月28日、私たちはカナダのフォートマクマレーにいた。もちろん、オーロラを見るために(こりないヤツ)。今度のツアー選択基準は晴天率!どんなに活発なオーロラが発生しても、晴れなくちゃ見られない。今までもわかっていたが、実際に5日間も雪に降られるとつくづく実感した。

 そして迎えた第一夜、カナダの空に満点の星が広がった。肝心のオーロラはごくわずかしか発生しなかったが、天頂近くの高い北極星を確認し、まずは一安心。

 翌第二夜の22時、念願のはっきりした緑色のオーロラが東の空から昇ってきた! オーロラは見る間に北から西の空へ伸び、きれいなアーク状につながった。やった!やっと巡り会えたぞ、美しいオーロラに。その後もオーロラは消えることなく見え続け、深夜2時には全天に広がり激しく動き出した。ブレークアップだ! オーロラは不規則に動き回り、点滅するように出現と消滅を瞬時に繰り返す。ふと気づくと薄明が迫っていた。

 こうして、最終夜にはコロナ状まで観測し、のべ8夜にわたる私たちのオーロラツアーは完結した。

細かな筋のあるオーロラ。
赤い色は肉眼では感じにくく、緑色がよく見える。オーロラはブレークアップすると動きが激しすぎて、カメラでは追えない。ビデオカメラでも感度が足りないので撮るのは難しい。自分の目にしっかりやきつけよう。カナダのフォートマクマレーは、4年程前からオーロラツアーが始まった新しい観測地。北緯56度50分と低い緯度で観測できるので、防寒対策も比較的楽。今年は特に暖かく3月末に雪がなくなり、一晩中外にいてもまったく寒くなかった。



 冒頭にあります通り、この文章は「SKY WATCHER」2000年6月号に掲載されたものを、アストロアーツ様のご好意でここに転載したものです。

 なお「SKY WATCHER」誌は2000年9月号を持ちまして残念ながら休刊となりましたが、2000年11月より新しく「月刊 星ナビ」として再スタートすることになりました。


 なお、SKY WATCHER誌に掲載されたページに近い形の文書をPDFファイルで取り出せます。よろしかったらお楽しみ下さい。(別途Acrobat Readerが必要です。)

 ※この資料の個人で楽しむ以外の使用、複製、再利用をかたく禁止致します。


表紙のページに戻る